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修学院離宮の家
House in Syugakuin-Rikyu
「修学院離宮の家」
修学院離宮の麓、大通りから少し坂を登ると突如開ける高級住宅街に位置するこの住宅は、1980年代に建てられた社長宅であり、立派な門構えと和風の庭に圧倒される。しかし数寄屋風の繊細な玄関から一歩中に入ると、濃茶のペイントが塗られた、いわゆる洋風な意匠が施され、アルミの窓ごしに和風庭園が切れ切れに見えるという大変チグハグな和洋折衷住宅であった。数年前に住まい手が変わると同時に用途も変わり、母家と離れがブリッジで繋がれた大規模な住宅を、住みながら社員のセミナーにも使えるよう、母家1階は訪問者が利用する公的な広間、2階は訪問者のための宿泊スペース、そして離れの2階をオーナーのための住居スペースへと改装することになった。
今回の改装で私たちが取り組んだことは2点に集約される。ひとつは、このあまりにもチグハグな和洋折衷の意匠を、特に上質な素材が使われた和の意匠を残しながら調停していくこと。そしてふたつめは、四方を緑に囲まれながら、アルミサッシの単調な窓の連続によって暗く閉塞感を醸し出していた開口部の改変である。
中でも最も大きく改変したのは、日本庭園に面する南側と、山の豊かな緑に隣接する北側の窓であり、これらの場所は、椅子で利用する洋間ではあるものの、外部の環境は和風のプロポーションに則っており、その間をつなぐ開口には、庭から和風の意匠が流れ込んでくるように水平方向の広がりが必要であると判断した。そして、景色が和風、室内が洋風でありながらバランスの取れた和洋折衷の空間を目指すこととした。
一方、和室については、外装はアルミサッシだが、内部の障子が線の細い美しいものであり、空間のプロポーションが、近代建築を学んだ私たちでは出せないものであることを考えて、壁の仕上げをやり直すだけにとどめている。
このように、窓を改変し、四周から室内に入る光を編集した結果、それぞれの内部空間の外部との関係が変化するわけだが、今回はさらに壁の色を調整することで、内部空間と内部空間の間で、和と洋とそして和洋折衷の意匠が断絶するのでなく、なめらかにシーンが変わるように心がけた。
設計することはウチからの要請とソトからの環境が、ちょうどつりあった境界面を探すことだと考えているが、改修設計では一度引かれた境界面を問い直して、新しい釣り合いを探すことになる。新築に取り組むときには、この境界面を極力シンプルに力強く形づくろうとしているが、今回の改修ではすでにある境界線を壊して作り直すよりも、境界の外側や内側に補助線を引くことで、新しい釣り合いを探した。
修学院離宮の家
住宅
京都府京都市
敷地面積:218.56㎡
建物面積:184.61㎡
延床面積:305.39 ㎡
建物規模:2階建て
設計者:竹口健太郎、山本麻子、中村奎吾
構造方式:木造
構造設計者: 柳室淳、柳室淳構造設計事務所
竣工:2022年
フォトクレジット: 大竹央祐