大きな川と岸辺の大樹に面しながら、前後を車道と巨大なマンションの敷地に挟まれ、隣家がぴったりとたつ、四方に特徴あるコンテキスト。一方で都市住宅の典型である狭い敷地の準防火地域。汎用性のある木造在来工法や既成のアルミサッシ、外壁、家具などを用いながら、建売住宅では得られない空間の質をどのように担保するかについて考え、小さくも大きくもない開口を1階から3階へ螺旋状にうずまくように設けることにした。

採光・通風に加えて西面にある川への眺望をいかしつつ、日射を遮蔽する必要も考え、建売住宅によく使われる雨戸付き引違い窓を採用したが、これにより、網入ガラスでなくすっきりとした透明ガラスが入れられた。一方でガラス一枚を1350mm角の窓ともドアともつかないサイズとしたうえで、2階のダイニングスペースからちょうど景色がきりとられる位置を中心に斜め方向にサッシを連続させることで、内部からの視線は、全面開口のように360度ひらけるのでもなく、壁中央の窓のように視界を限定するのでもなく、川や街や空へと立体的に広がる。

平面は5.4m角の正方形。開口は空地のある東西方向だけでなく、隣家のある南北面にも連続していることで、外部の環境を等価にとりこむ。螺旋状の開口は、四隅の同一平面上に耐力壁を設けられないことが問題だったが、開口の上下に鉄骨を補強し耐力壁も螺旋状に連続させることで木造の架構を実現させた。

またスラブの開口は45度方向の火打ち梁を利用して三角形にあけたが、これも在来工法の特徴をいかしながら最低限の幾何学で上下階をつなぐことを考えた結果である。その一方で三角形の開口を通る螺旋階段は、1から2階、2から3階でまわる方向を変え、一方向に螺旋を描く窓との関係をより立体的にしている。正方形平面に対して螺旋状の窓と円状の動線。シンプルな平面の小さな住宅だが、構造そして家具と一体化した中スケールの開口が、住人の動きに対して、時に寄り添い、時に反転し、守られると同時に開放された住空間を、大阪の都心に実現した。

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