株式会社アルファヴィル一級建築士事務所

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ROOF ON THE HILL

斜面に架かる屋根

はじめてこの敷地を見た時、なだらかにくだっていく斜面と、その先に遥かにかすむ大阪市街の風景が印象的だった。しかし新たに開発された周辺宅地では斜面を生かす試みはほとんどなく、早晩普通の住宅地になっていくことが予想された。そこでこの気持ちよい風景を残せるような、斜面に屋根を架けただけの建物を考えた。

段状の敷地に、約3mx3mの小さなグリッドをかぶせ、寝室・子供室・水回りに壁を廻らせて囲い取り、残りの部分をダイニング・リビング・和室とした。100mm角の柱と148x100mmのH型鋼からなる鉄骨骨組の上にデッキプレートを載せて屋根としているが、南を向いたハイサイドライト2本が住宅内を貫くように、骨組みと45度をなすブレース材として同サイズの鉄骨を2段に設けた。開くことが難しい四周には通風用の小さな窓だけだが、このハイサイドライトからは、室内のさまざまな場所から空や街をのぞくことができる。また斜面に沿わせるために、のこぎり状に棟と連続する屋根は、それを支える細い鉄骨部材と相俟って、室内に木立のような広がりを生み出している。

自然の地形、用途に応じたグリッド、環境を整える45度のハイサイドライト。機能や用途に応じるため合理的かつ幾何学的な操作を重ねたが、空間としては床の高さ方向の変化、90度につながる部屋にさらに45度方向に天井が交わっていくことで、立つ位置によって思いがけない景色の広がる住宅ができ上がった。

斜面を生かした工法

構造は、平面的にはすべて直交+45度のシンプルなものだが、床の段差とのこぎり状の屋根のためにほぼすべての柱高さが異なるというダイナミックかつややこしい骨組。これを極力生かすことを考え、内壁は柱・梁と同じ100mm厚さとなるようPBを柱・梁で囲むように納めた。一方、外壁はすべてこの骨組を包むこととして、鋼板サイディングを選び、アルミサッシも外付けタイプ、給湯器や室外機といった設備機器も住宅を包むものとして3方に配置し、特に隠していない。ヘアラインをかけない、素地に近いステンレス2B仕上げの屋根と相俟って、斜面に置かれた機械であることをイメージした。

空間を横断するスリットをもつ屋根

光を屋内深くへ導く屋根の段差スリットは、一方で屋根の剛床機能を奪う。水平力を集約するブレース構造はこの建物には不向きとなるため、柱ごとに水平力を負担する分散型のラーメン構造を採用することとした。柱は100mm角の鋼管だが、梁が2段で取り付く仕口部については溶接処理が煩雑とならぬようムク材を利用している。部分的なムク利用は鋼材量の増分もしれており、ダイアフラムや切断加工・溶接の費用が必要なくなり、仕口の性能低下の懸念がない最善の方法といえる。

住宅
兵庫県
敷地面積:232.31㎡
建物面積: 99.87㎡
延床面積: 99.87㎡
建物規模 :  平屋
構造方式:  鉄骨造
構造設計 :Eisuke Mitsuda (Mitsuda Structural Consultants)
竣工 :   2010年
フォトクレジット : Kai Nakamura

PREVPREV
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